株式会社 田中三次郎商店

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特集⑲

粉体プロセスの可能性を拓くグローバル企業、
フロイント産業との
パートナーシップ

フロイント産業は1964年に東京で創業。造粒・コーティング装置などの機械製品と、医薬品添加剤、食品品質保持剤などの化成品の、開発から販売まで行い、グローバル展開しています。近年になり自社の流動層造粒乾燥機(粉末原料を流動、結合させ、造粒する特殊な装置)用に、田中三次郎商店が取り扱うSefar(セファー) 社製バグフィルターを、優れた製品として推奨。これをフロイント産業の流動層造粒乾燥機を使用するお客さまに伝えるべく連携して動き、採用実績を拡げてきました。今回は、フロイント産業が静岡県浜松市に有する技術開発研究所に技術開発室の味園隼人さんを訪ね、二社の協働についてお話ししてもらいました。

フロイント産業株式会社 公式サイト

田中さんも私も、
仕事にやりがいを
感じているんです。

登場人物:
フロイント産業株式会社
技術開発室
味園隼人さん、
株式会社田中三次郎商店
メッシュテクノロジー事業部
田中慎一さん

むずかしい名前の装置で
製造するのは、
意外に身近なもの

流動層造粒乾燥機と言われて「あぁ、あれね」とわかる人はそうはいないと思います。粉末原料を、装置の中でエアーによって流動させて、それに液体をスプレーすると、粒子が結合します。それを造粒というのだそうですね。さらにこれを乾燥するのがこの装置です。なにやらむずかしそうで馴染みがありませんが、味園さんにお聞きしてみると、意外にも身近なものの製造過程で用いられていました。

造粒済みのものを見せてもらうと、粒が細かくて見た目には造粒前の粉末と区別がつきづらいものもあります。しかし、味園さんによれば、医薬品や食品で、私たちが「粉」と認識する最終製品は、かなりの割合で造粒されているのです。わかりやすいのが、サッと溶けるカップスープや、一般に“粉薬”としてくくられる顆粒の飲み薬。粉状だけど、服用時、サラッと落ちて袋に残らず、喉にも張りつかない粉薬は、造粒されています。飲み薬でも、原料等の特性上、造粒に向かないものもありますが、造粒すると、服用する人の飲みやすさはもちろん、飛散しづらく薬剤師さんの扱いやすさも向上します。フロイント産業の経営ビジョンには、「世界中の人々の医療と健康の未来に貢献」が含まれており、なるほど、と思いました。

指で擦り合わせて、
粉が指紋に入らなければ
造粒されています。

高性能ながら
販売しあぐねていた
バグフィルターを

さて、流動層造粒乾燥機の内部に取り付ける、特殊なフィルターが、バグフィルターです。医薬品には極めて高額な成分を含むものもあり、貴重な原料粉末が、フィルターを抜けて失われることを、たとえ微量でも減らすことができれば大きな成果なのです。田中三次郎商店は、かねてSefar社製のバグフィルターの品質に自信を持っていました。スイスに本社を置くSefar社の技術は、世界的に定評があり、実績も十分です。しかしながら流動層造粒乾燥機に用いるバグフィルターは、医薬品の製造における厳格なルールと手続き上の複雑さも関係して、気軽に既存品からの置き換えが決まるものではありません。優れた製品だとわかっていながら、販売しあぐねていました。

流動層造粒乾燥機

田中さんはこう語ります。「採用を検討してもらうには、より具体的なデータを揃えて示すべきだとわかっていました。田中三次郎商店は、多くのことを自前でやろうと工夫する会社ではありますが、今回については、流動層造粒乾燥機を所持していない以上、最も説得力のある、実機でのデータを集めることはできず…。そんなとき、味園さんが、社内で比較テストをすべく動いてくれたんです。出てきたのは、予想通りのいい数値でした。数値をもとにコストメリットを計算して提示できるようになったことで、営業は格段にしやすくなりました。本当にありがたかったです」。

一方の味園さんは次のように。「当然ですが、テストする価値があると考えたからしたまでで、田中さんのためというわけではないですよ(笑)。いい結果が得られたので、田中さんには、営業担当者に同行して、当社の流動層造粒乾燥機をお使いのクライアントさんに紹介してもらうなどしています。我々のミッションは本来、さらに高性能な流動層造粒乾燥機を開発することですし、鋭意取り組んではいますが、それには時間を要します。バグフィルターの向上によって少しでも改善できるなら、クライアントさんにメリットをもたらすことができます。もっと言うと、クライアントさんの製造コストが抑えられれば、その先の人たちにもメリットを還元できるかもしれません」。

良きパートナーシップは、
良きコミュニケーションから

味園さんの言葉にうなずく田中さん。味園さんは、「頼れる兄貴のよう」だそうです。どんなことも相談しやすいと。2018年に外資系の食品会社から田中三次郎商店に転職してきた田中さんは、フロイント産業の担当を前任者から引き継いだとき、少なからずプレッシャーを感じたそうです。フロイント産業の当時のご担当は、味園さんの上司にあたる方でした。その方にも「業界を知らない中、とても助けられました」とのこと。2021年に味園さんに代わっても、引き続き仕事がしやすく、「おかげさまで、浜松出張で気が重いと感じたことはありません!」と明るい。対する味園さんは、「私が担当になる前から信頼関係ができていたこともありますが、田中さんとはコミュニケーションがスムーズです。仕事をご一緒する上で、これはとても大きいですよね。親しみやすい雰囲気に加えて、サービス精神も提案力もある。だから社内の営業担当者にも安心してつなげますし、うちが出展する展示会に、ブースに立ってバグフィルターを案内してもらったことも。うまく連携できていると思います」と。

その味園さんに、外部とパートナーシップを組むことによるメリットを尋ねると、「社内だけでは限られるのはもちろん、広く見えて狭い業界なので、関わってくださる多様な人たちからの情報は貴重です。情報だけではなく、互いのつながりからあたらしい機会を生む相乗効果が期待できるので、外部の方との協働は重要だと考えています」さらに続けて、「より良い関係づくりには、やっぱり、コミュニケーションですね」と。研究開発の部署の方がコミュニケーションを強調されるのは、少し意外な感じもしましたが、味園さん、人と接するのが好きなことに加えて、職務でも、性能の評価をしに来社されるお客さんへの説明などを行っているそうで、納得です。

「あんまりコミュニケーションを密にしていると、提案があったり、アイデアが生まれたりで仕事が増えがちなので、ちょっと距離を置いたほうが私の仕事的には楽なのですが」と笑いながら前置いた味園さん、今後は、田中さんと一緒に勉強会がやれたらと考えているとのこと。最近は、オンライン開催で60〜70名の参加を得ることもあるそうで、味園さんはこれまでも、クライアント企業の新入社員の方などを対象に、この分野の専門知識をレクチャーするなどしてきました。田中さんが担うとすれば、やはりバグフィルターの説明でしょうね。「より高性能なバグフィルターを導入してもらうことで、みんながWin-Winになれると自信を持っています」と語る田中さんですから、熱が入るかもしれません。よき協力関係で、さらに「世界中の人々の医療と健康の未来に貢献」できますよう。

フロイント産業さんの
展示会に立って、
「社員みたい」と言われたのが
密かに嬉しかったです。
by田中さん

手にしているのがバグフィルター。
素材はもちろん、超音波溶着など接着にも特殊な方法を用いており、高い製造技術を要する。

取材を終えて

「この会社、この仕事が合っていた」という味園さんは、新卒入社でキャリア15年を数えます。田中さんのほうは、世界有数の食品会社からの転職組で、「いまが楽しい」と。やりがいを感じてお仕事に打ち込むおふたりには、地に足がついた安定感のようなものがありました。冗談をまじえてお話しされる様子に余裕も漂う味園さんと、端々から真面目さが伝わる田中さん。「兄貴のような」味園さんが、兄貴のような笑顔で応じながら、場を和らげます。いずれも理知的な両者ですが、ここでご趣味について。「散歩がてら家族でウォーキング」と、ほのぼのした味園さんに対し、田中さんからは、「筋トレとキックボクシング」という、意外に武闘派な回答が得られています(笑)。(取材・文:みつばち社小林奈穂子)